TULLY'S COFFEE

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苦境を共に乗り越えたから今がある。タリーズコーヒーのバイヤーが語る、コスタリカ・マイクロロット(少量生産)プロジェクトの舞台裏。

タリーズコーヒーではお客さまに「最高の一杯」をお届けするために、良質な生豆を調達し続けることに力を注いでいます。その役割を一手に担っているのが、プロダクト開発ビーンズ開発グループ。彼らは「コーヒー作りには、どこまでも人が関わっている」と話します。コスタリカで行われているマイクロロットプロジェクトを担当する渡邊瑛子に、プロジェクトを通して感じた「人との繋がり」について話を聞きました。

生産者の哲学を届けたい。
少量生産で味わいを追求するマイクロロットプロジェクト

この秋タリーズがお届けするのは、コスタリカの肥沃な大地が育んだ特別なコーヒー豆。南北アメリカ大陸を結ぶ地峡地帯にあるコスタリカは、スペイン語で「富める海岸」を意味する国名の通り、国土の東西を太平洋とカリブ海に挟まれ、9つの活火山が生み出す多種多様な生態系を持つ自然豊かな国です。この国で、タリーズコーヒーはドータ農協と「マイクロロットプロジェクト」という取り組みを行っています。

日本にあるタリーズコーヒーの店舗に並ぶ「コスタリカ マイクロロット」は、小規模生産者が丹精込めて作り上げた高品質のコーヒー豆を、ごく小さな製造単位で打ち出しています。1ロットの量は少ないもので200kgほどと少なく、全国のタリーズコーヒー店舗で販売する量には到底足りないため、地域で異なるロットを販売しています。 お客さまのもとに届くのは「完熟赤実100%」という厳しいエントリー基準を満たし、さらにタリーズコーヒーのバイヤーによるカッピング審査をくぐり抜けた8ロットだけ。しかし、「タリーズもドータ農協も、順位を決めることを大事にしているわけではないんです」と渡邊は話します。

「そもそもドータ農協に集まるコーヒーは、品質が非常に高いものばかり。その中であえて私たちがプロジェクトを行う理由は、『高品質のコーヒーをお客さまに届けるだけではなく、その価値を見える化し、生産者に10年後にも品質の高いコーヒーを作り続けてほしいから』です。だからこそ大切にしているのが、生産者みずからがコーヒーに対する思いを語る場をつくること。思いを言葉にすることは、生産者自身が自分にとってコーヒーがどんな存在か、どう向き合っているのかを再認識できる機会になります。そして、その真摯な思いを単に知るだけではなく、私たちバイヤーが日本に持ち帰り、店舗のフェロー(従業員)からお客さまにお届けするところまでが大切なんです。一杯のコーヒーを通じて、そこにつながる『人』を感じてもらえたら、と思っています」

良質な完熟赤実100%の「コスタリカ マイクロロット」は、果実感あふれるジューシーな味わいが特徴です 。「ベースとしてあるのは、フルーティではっきりとした明るい味わい。さくらんぼのような、やさしい甘さを楽しめるんです。さらに マイクロロットならではのユニークさ… たとえば同じ生産エリアにある農場でも、日のあたり方や水のはけ方が違えば育ち方 も変わります。さらに生産者の哲学も、そこに反映されてくるわけです。わかりやすい例を挙げるなら 、古い木を大切に守りながら自然に添う形で生産する人、新しい品種や積極的な農地改良にチャレンジする人など、考え方はさまざまです。そこに加えて、マイクロロットプロジェクトならではの丁寧に集めた『完熟赤実のみ』という要素と、少量だからこそできる農協受け入れ後の生産方法の違いによる個性… この違いを楽しめることが、マイクロロットの醍醐味ですね」

苦境を共に乗り越えたからこそ、生産者との絆が深まった

タリーズコーヒーでは、生産地や銘柄にとらわれず、カッピングによる味わいの評価に徹底的にこだわり、その年の出来をジャッジしています。2018年からマイクロロットプロジェクトを担当している渡邊は、「近年、コスタリカに限らず世界中で良いコーヒーが生まれにくくなっているんです」と話します。

「近年はどの国でも、地球温暖化による異常気象や昼夜の寒暖差の低下によって、生産者がどんなに真面目に作っていても品質が落ちてしまうケースをよく目にしますね。それでいて需要は伸びているので、良いコーヒーを確保し続けることはコーヒー業界全体に言える課題だと感じています」

農作物であるコーヒーは、その年の生産環境や収穫状況がその出来を大きく左右します。例えば雨の多い年には、チェリーの完熟を待たずに収穫せざるをえない場合も。完熟していないチェリーが混ざれば、コーヒーの味にも“青渋さ”が表れ、タリーズコーヒーが目指す「最高の一杯」から遠のいてしまう… トップクラスの品質を維持し続けるためには、農協や生産者とただ取引するだけではない、一歩踏み込んだ取り組みが求められます。そこで渡邊が特に力を注いでいるのが、生産者に対する誠実なフィードバックです。

「自然を相手にする農業に、私たちの意見を反映してもらうことはとても難しいんです。私たちの提案によって収穫量が減ったり人件費がかさんだりする可能性を考えれば、ドータ農協も生産者も慎重になって当然です。だからこそ私たちにできるのは、最終的に出来上がったコーヒーをサンプルとして飲む時に、その品質を的確に捉え、誠実にフィードバックをすること。『こんな味がするけど、生産の過程で何かありましたか?』『タリーズとしてはもっとこういう味わいがほしいんです』など。現地で顔を合わせているからこそ、嘘も妥協もない評価をするようにしています」

フィードバックが的確であればあるほど、現地の状況や農法を熟知した生産者のアイデアが生まれ、タリーズコーヒーと作り手とのディスカッションも活発になります。生産者が無理なく継続できる改善策を相談しながら、二人三脚で品質の高いコーヒーを追求しているのです。

しかしコロナ禍に入り海外渡航が制限されると、現地で対面して話し合う機会がなくなりました。さらに現地では、収穫時期になると国外や都市部から来るはずのピッカー(収穫する人)が来られなくなり、せっかく作ったコーヒーを収穫しきれず破棄することも。また日本のタリーズコーヒーも、フェローたちが緊急事態宣言に伴って店舗を閉めたり、感染防止対策に神経を尖らせたりする辛い日々を送っていました。ドータ農協とタリーズコーヒー、それぞれが苦しい時期を乗り越え、2022年にコスタリカでようやく再会した時のことを渡邊はこう振り返ります。

「コロナ禍でも、オンライン会議やメールで頻繁にやり取りはしていました。彼らが作った商品が店舗に並んでいる様子を写真に撮って送ったり、フェローたちから彼らに向けたメッセージを添えたりして、会えない間もドータ農協との関係は続いていたんです。だから3年ぶりに会えた時には、言葉にできない感情があふれましたね。生産者が泣きながら私のところに来て、『こうしてあなたにまた会えるとは思わなかった』と言うんです。お互いが苦しい時期にも繋がっていたからこそ、また一つ信頼を重ねたと感じました」

一般的に、生産者は自分たちが作ったコーヒーがどんなパッケージに包まれ、どのように店舗で提供されるかを目にすることはほとんどありません。マイクロロットプロジェクトではタリーズ と生産者の距離が近いからこそ、その様子を届けることができ、「タリーズのためにおいしいコーヒーを作ろう」という生産者の意気込みにもつながっているのです。

一杯のコーヒーから人の輪が広がるコミュニティカフェを目指して

「学生時代からカフェという空間が好きだったんです」と話す渡邊。2007年に入社する直前には、自分の目で本場のカフェを見るために、タリーズコーヒーの誕生の地・シアトルまで足を運んだほどです。

「本場シアトルのカフェに、お客さんとして行ってみました。そこで驚いたのは、従業員とお客さま、そしてお客さまどうしの距離が近いこと。顔なじみでなくても『やあ、元気?』『今日は良い天気だね』といった何気ない会話が交わされて、お店全体に心地いい空気が流れていたんです。帰国して入社した後、まずはフェロー(従業員)として店舗に配属されましたが、シアトルのカフェのように、人どうしの温かな交流が生まれるようなお店にしたいと思いました」

そんな思いから渡邊は、店舗で開催するコーヒースクールの講師に手を挙げました。コーヒースクールでは、社内資格であるコーヒーマスター・アドバイザーを取得したフェロー(従業員)が講師を務め、お客さまに向けて、生産国ごとの特徴といった知識をはじめ、コーヒーの抽出技術やテイスティングのコツなどを紹介しています。渡邊はいくつもの店舗でスクールを開催し、お客さまと直接コーヒーの話をする機会を増やしていきました。

「入社したばかりで、当時は私自身もまだまだ勉強中の身でした。コーヒーに詳しいお客さまからの質問に答えられなかった時には、『次にお会いする時までに必ず調べておきます!』と宿題にさせてもらったことも。それで後日、調べた内容をお客さまにお伝えするととても喜んでくださって、お客さまとの間に絆のようなものが生まれるんです。今の私がいるのは、コーヒーのことを学ぶ楽しさを分かち合ったお客さま、そして一緒に働いてきたフェローたちのおかげです」

渡邊は店舗マネージャーを8年間務め、タリーズコーヒーの生豆調達を担うビーンズ開発グループへと移りました。かつては店舗フェローとして、そして現在はバイヤーとして、タリーズコーヒーが目指す「町のコミュニティカフェ」を作っているのです。

産地で生産者と良い関係を築くために、いくつかの現地語を覚えたり、時には民族衣装を身にまとって交流したりすることもあるという渡邊。最後に、コーヒー作りについてこう語りました。

「コーヒーの魅力って、そのおいしさはもちろんのこと、作る過程でどこまでも人が関わっている点だと思うんです。

生産者や農協とタリーズをつないでくれる取引先、タリーズコーヒー社内にある全ての部署もそうですし、最後お客さまに飲んでいただくためには店舗フェローの存在も不可欠です。関わる全員がひとつのチームとなっていて、その人たちがコーヒーにどう向き合っているかによって、その味わいも価値も変わってくる。だから私たちバイヤーは、人との繋がりを何よりも大切に思うんです」

タリーズコーヒーの生豆調達を最前線で担っているビーンズ開発グループ。その中でバイヤーとして活躍する渡邊の人に対する思いに迫りました。これからも人の手で生み出す「最高の一杯」を求めて、タリーズコーヒーの歩みは続きます。

< 商品情報 >
2023 コスタリカ マイクロロットプロジェクト 金賞受賞コーヒー

金賞受賞の7ロットを、北海道・東北、関東、神奈川、中部、関西、中四国、九州・沖縄の全国7エリアにわけて発売します。さらに、コーヒーマスターが在籍する店舗では、他のロットとは異なるナチュラル精製で仕上げた限定ロットも。ぜひお近くのタリーズコーヒーでお楽しみください。

2023/10/11 発売
「2023 コスタリカ マイクロロット」 各1,350円(税込)/150g
※数量限定販売のため、無くなり次第販売を終了いたします。