
店頭でお楽しみいただく一杯のコーヒー。
その味わいは、見えないところでの確認の積み重ねによって支えられています。
タリーズコーヒーでは、レギュラービーンズの品質を保つため、定期的にカッピングを実施しています。
カッピングとは、コーヒーの香りや味わいを確かめ、その個性や品質を見極めるためのテイスティングのこと。粗く挽いたコーヒー豆にお湯を注ぎ、立ち上る香りや味わいを丁寧に見極めていきます。
変わらない美味しさをお届けするために続けられている、静かな取り組みです。
タリーズのカッピングは、前週に承認された味わいを基準に、次に届くロットが同じ品質・同じコンセプトであるかを確認するために行われます。コーヒー豆は、産地や収穫時期、焙煎条件によって表情を変えるもの。同じサプライヤーから調達していても、ロットや季節によって味わいは均一ではありません。だからこそ、一度決めた味をそのまま届け続けるためには、継続的な確認が欠かせません。毎週のカッピングは、その“基準”を守るための大切な時間です。

カッピングでは、その日に確認する複数種類のコーヒーを並べ、比較しながら評価していきます。一回あたりで確認するのはおよそ10種類前後。月単位では30〜40種類に及びます。評価は、香りや酸味、コク、後味といった項目に加え、商品コンセプトが適切に表現されているかどうかも重要な判断軸となります。
カッピングシートに基づく評価に加え、その場で感じた印象を言葉としてチェックシートに書き留めることも。
後から振り返ったときに、その時の迷いや特徴を読み取る手がかりとなり、判断の精度を高めていきます。

カッピングの場には、独特の静けさがあります。
一杯一杯の違いに集中するため、言葉を交わすことなく丁寧に味と向き合う時間が続きます。すべての評価が終わった後、メンバー間で意見を共有し、認識を揃えていきます。その内容は、チーム内だけでなく、工場や産地とも共有され、品質の維持・向上に活かされていきます。
味わいだけでなく、豆の見た目や焙煎状態、生豆の状態なども含めて多角的に確認することが、この工程の特徴です。

タリーズのコーヒーは、多くのブレンドによって構成されています。それぞれのパーツとなるコーヒー豆は、産地やロットによって個性が異なり、同じ状態で揃うことはありません。
さらに、焙煎は季節によっても影響を受けます。気温や湿度の違いによって焙煎機の状態が変わり、同じ設定でも焼き上がりは微妙に変化します。こうした条件の違いを踏まえながら、最終的に“同じ味”としてまとめ上げていくこと。それが、ブレンドを扱う難しさであり、同時に価値でもあります。
渡邊さんは、その難しさについてこう語ります。
「継続して販売している商品だからこその難しさがあります。
複数の豆をブレンドして味をつくり上げるのは大変ですが、その反面、出来上がりの味をつくるためにそれぞれが補い合えることもあります」
変化する原料や環境の中で個性を見極め、組み合わせ、整えていくこと。その積み重ねによって、タリーズのブレンドはつくられています。

カッピングでは、わずかな違和感も見逃さないことが求められます。
味に違いを感じた場合には、サンプルの範囲を広げて確認するなど、原因を慎重に見極めていきます。ただし、最終製品に影響が出る前の段階で丁寧なチェックを重ねているため、商品として問題が発生するケースはほとんどありません。
原料の段階から積み重ねられる確認が、安定した品質につながっています。
また、小規模生産者によるコーヒーなどは特に繊細で、味わいのブレが出やすい傾向があります。その一方で、そうしたコーヒーはユニークで魅力的な風味を持つことも多く、タリーズのラインアップに豊かな個性をもたらしています。
難しさと魅力は、常に隣り合わせにあります。

担当の渡邊さんは、こう語ります。
「コーヒーのカッピングは、回数をこなしていくしかないと思っています。これまで何年も続けてきて実感しています。
担当になってからは、クロップごとの変化を身体の中に覚えこませようと、何度もカッピングを繰り返してきました。自分の中の基準のブレ幅を、少しずつ小さくしていけるように」
さらに、味覚を磨くために、日常の過ごし方にも意識を向けてきたといいます。
「先輩の日頃の行動もよく見ていました。
食事のメニューも同じものを選ぶようにしたら、味わいを正確に捉える力が付くのではないかと思い、真似していたこともあります」
経験を重ねることで、味の違いは少しずつ輪郭を持って感じられるようになります。その感覚の積み重ねが、日々の一杯の品質を静かに支えています。タリーズのハウスブレンドは、ブランドを象徴する存在です。日常の中で、誰にとっても心地よく楽しめる一杯であることが大切です。
渡邊さんは、その向き合い方についてこう語ります。
「ハウスブレンドは、一番大事なブレンドです。変えてはいけない味であること。そして、より良くしていきたいという想い。その両方を大切にしています」
「タリーズコーヒーは、たくさんの人に愛されるコーヒーショップでありたいと、いつも思っています。もっとカジュアルに、日々の生活の中にあるブランドでありたい。その中で、ハウスブレンドは際立った個性を持ちすぎるのではなく、タリーズを象徴する味わいであることが大切だと考えています」
変えてはいけないものと、変えていくもの。その両方を見つめながら、タリーズの味はつくられています。
変わらない美味しさのために、変化を恐れず向き合うこと。
その一杯は、今日も丁寧に確かめられています。