あったかい飲み物が恋しくなるこの頃。 今年も「アイリッシュラテ」の季節がやってきました。今年で発売14年目を迎える「アイリッシュラテ」は、毎年楽しみに待っていてくださるお客さまも多い、ホリデーシーズンの定番ドリンクです。タリーズコーヒーでは、年間を通して季節感あふれる限定ドリンクをお届けしています。その企画を担当している石川千晴と小林由果 に、ドリンク開発の裏側やタリーズが大切にしている素材への考え方について話を聞きました。
タリーズコーヒーでは、「チョコレートLOVERSモカ ~ダークな誘惑 カカオ73%~」「ほっこりOIMOラテ」「アールグレイ香る英国のティータイムカフェラテ」など、今年もたくさんのシーズナルドリンクをお届けしてきました。毎年そのラストを飾るのが、アイルランド発祥のアイリッシュコーヒーから着想を得た「アイリッシュラテ」。エスプレッソのコクと香ばしいフレーバーが、なめらかなミルクとホイップクリームと溶け合い、寒い日にほっと一息つける味わいが好評です。
こうしたシーズナルドリンクについて「実はどの企画も、土台にあるのはカフェラテなんです」と話す石川と小林。
石川「カフェラテは、タリーズコーヒーのブランドを代表するドリンクです。創業時から愛され続けているメニューだからこそ、『味を変えてはいけないもの』という考えが根付いています。常連のお客さまの中には『何を注文するか迷ったら、とりあえずカフェラテだよね』と言ってくださる方もいるほど。一日のスタートに、午後のひと時に、仕事終わりのリラックスタイムに。どんな時にも寄り添ってくれるドリンクなんです」
小林「エスプレッソとミルクで作るシンプルなドリンクだからこそ、お客さま好みにカスタマイズしていただくことができるのも特徴です。甘さを足したい方はホイップクリームやフレーバーシロップ 、はちみつを加えてみたり、逆にコーヒーのコクや苦みをより強く感じたい方はエスプレッソショットを追加したり。私たち企画チーム も、こうしたカスタマイズと似た考え方でシーズナルドリンクの企画を考えているんですよ。カフェラテに季節の果物や野菜を合わせてみて、それならトッピングにはこのソースをかけて、甘さはこのぐらいで……といった風に」
シーズナルドリンクを企画する中で、もっとも神経を尖らせるのは「甘さ加減」。見た目の華やかさもあって、その一杯を単なるドリンクとしてではなくデザート感覚で楽しむ人が多いのです。一口目は甘いソースとホイップクリーム、飲み進めるごとにだんだんとコーヒーのコクや苦みが強くなっていき、最後の一口になれば甘さ控えめでさっぱりと締められる。一杯のドリンクをまるで一皿のデザートのように仕上げることが大切なのだと言います。
石川「甘さって、飲んだ時の満足感に直結するんですね。トッピングやクリームがのっているシーズナルドリンクの甘さが控えめだとどこか物足りない印象を与えてしまいます。逆に甘くし過ぎると、甘ったるくて飲みきれなくなってしまう。一杯飲み終わった時に、『ああ、おいしかった~!』と心地よい満足感に着地できる甘さ加減を常に探っています」
小林「甘さの難しいところは、温度によって感じ方が全く異なってくる点です。発売時期が夏か冬か、ドリンクそのものがアイスかホットか。冷たいものほど甘く感じにくいという話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。それにもちろん人によっても感じ方が違いますよね。だから私たちは新商品の企画段階で、年齢も性別もまちまちな5~6名のメンバーで試飲を重ねるようにしているんですよ。全員が『おいしく飲み切れる甘さだ』と思える加減を目指しています」
素材にとことんこだわって自然のおいしさを追求することも、タリーズコーヒーが守り続けているポリシーのひとつです。カフェラテに使われている北海道産生乳100%成分無調整牛乳 は、脂肪分が高い牛乳ならではのコクと飲みごたえ、そして丹念にスチームした時に現れる自然な甘みとなめらかさが特徴。さらに、この牛乳はドリンク開発においても重要な役割を果たしていると2人は話します。
石川「さまざまな食材を組み合わせ、毎回新しいおいしさを表現したいシーズナルドリンクにおいては、この牛乳が持つ『クセの少なさ』が活躍しています。桃やリンゴといったジューシーなフルーツに合わせても、さつまいもやチョコレートといったそのものの甘さを楽しみたい食材に合わせても、決してその風味を邪魔せずに全体の味わいをまとめ上げてくれるんですよ」
小林「実は私はもともと牛乳が苦手だったのですが、店舗でバリスタがていねいにスチームしたミルクを飲んだ時、そのおいしさと自然な甘みに感動したんです! バリスタの技術が高かったのもありますが、そもそもの牛乳臭さが少ないんですね。このクセの少なさは、タリーズコーヒーのドリンクに欠かせない要素だと感じています」
タリーズコーヒーで使われている牛乳は、北海道の豊かな大地でおいしい水をたくさん飲んで育った牛からとれたもの。さらに飼料となる牧草は酪農家が自前で育てるなど、牛乳の品質を上げるために日々努力しています。
一方で、こうした労力をかけてとれる牛乳は、近年価格が高騰していることも事実です。現在770店舗 を超えるタリーズコーヒー全店に、同じ牛乳を調達し続けることは容易いことではありません。それでも素材に妥協しないのには、「タリーズコーヒーが目指すおいしさ」が明確にあるからだと石川は続けます。
石川「近年は、食材の価格高騰を受けてコストを抑える流れが業界全体で強まっています。結果、牛乳ではなく乳飲料や加工乳を選ぶ企業も増えてきました。 そういった状況でもタリーズコーヒーでは、創業から26年間、無調整牛乳を使い続ける ことに強くこだわっています。なぜなら『いつも変わらないおいしさ』をお客さまに届けたいから。その『いつも変わらないおいしさ』というのは、ただいつ飲んでも味が同じというだけではなく、誰がどこで育てた食材を使っているのか、自然の恵みが育んだおいしさに余計な手を加えず生かせているか、ましてや体に良くないものが入ってはいないか……という安心感や安全性に基づくおいしさのことなんです」
牛乳に限らず吟味して選んだ良い素材を使い、日夜アイデアを膨らませて企画開発されるドリンクメニュー。その一杯をお客さまに直接ご提供するのは店舗に立つバリスタたちです。石川と小林の2人も入社後すぐ店舗に配属され、バリスタとしての技術を磨いたのだと言います。
小林「バリスタとして最初の一歩は、カフェラテを自分で作れるようになるための練習でした。エスプレッソの正しい抽出の仕方や、ミルクをふわふわに仕上げるスチーミング、そしてエスプレッソのクレマ(泡)を崩さないように手早くミルクを注ぐ繊細な技術。目安となる温度やミルクを注ぐ時のピッチャーの傾き具合といった最低限のオペレーションはありますが、それでもカップの中を見ながらバリスタの手で調整しなくてはいけない要素はとても多いんです。とにかく練習あるのみでしたね」
石川「私も初めの頃はカフェラテをうまく作れなくて、上手な先輩に教えてもらったり自主練習を重ねたりして技術を身につけました。私たちも含めてタリーズコーヒーのバリスタたちには『完璧に作れた』という感覚があまりないんです。自分の中で過去一番に上手に作れたとしても『次はもっと上手に作れる』『さらに良くするにはどうすればいいだろう』と、最高の一杯を常に追い続けています」
日々の営業の中でも、先輩が後輩にレクチャーしたり近隣店舗が集まって勉強会を開いたりすると言います。そして毎年、全店のバリスタが集いその技術を競い合うバリスタコンテストでは、コーヒーを淹れる技術だけではなく、接客やオリジナルドリンクの企画も含めた総合的なスキルを切磋琢磨しているのです。
小林「店舗に立つバリスタは、私たち開発チームが考えたドリンクを実際に仕上げてお客さまにご提供する大事な役割を担っています。ドリンクを作る技術はもちろん、お客さまがご来店された時のご挨拶や笑顔、ご提供するまでのスピードに至るまで、お客さまがその一杯を感動と共に楽しめるかどうかはバリスタにかかっているわけです」
石川「タリーズコーヒーでは半手動のエスプレッソマシンを使っています。人の手を介しているからこそ、バリスタの技術や人となりが少なからずお客さまの体験に影響するんですね。だからお客さまから『あなたがバリスタに立っているなら今日はカフェラテを飲もうかな』とご注文いただく瞬間は本当にうれしいものです。もちろん、全店で味のブレが生じないようなオペレーションは存在します。だからこそお客さまから『自分が作る一杯』を求められるのは、味だけではない体験をきちんとお届けできている証拠だと思うんです」
最後に、「バリスタは、ドリンク開発チームがこだわって作り上げた商品をお客さまに届ける最終ランナーなんです」と石川。その言葉の通り、生豆を産地に赴き調達するバイヤー、その生豆の個性とおいしさを引き出す国内焙煎所、そして石川と小林が所属するドリンクの企画開発チームなどが繋いできたバトンを最後に受け取るバリスタは、タリーズブランドをさらなる高みに持ち上げる存在と言えます。これからもタリーズコーヒーが素材と技術を以てお届けする「最高の一杯」から目が離せません。