新鮮で刺激のある
店舗づくりを目指し
これからもチャレンジを
印銀 俊雄
事業開発本部 店舗開発第二グループ
強みである『柔軟性』を生かし
斬新な提案で心をつかむ
―印銀さんは、タリーズが新規出店する際の開発をご担当されているということですが、どのようなお仕事か教えていただけますか?
「新たにタリーズを出店いただける物件を探すこと、フランチャイズオーナー様を開拓すること、この両方が私の業務になります。フランチャイズオーナー様が出店しやすい立地をヒアリングし、条件にあった物件を探すこともあれば、私たちがぜひ出店したいという場所を探し、そこに携わっていただけるフランチャイズオーナー様を探すということもあります。また、物件のオーナー様のご要望で、フランチャイズではなく、直営を指定されることもありますので、その際は直営で出店させていただくことになります。
私たちは、コンセプトである『カジュアル&コージー(気軽で居心地のいい場所)』を、演出できるお店をつくることを大切にしています。さらに、物件のオーナー様とフランチャイズオーナー様が、どのようなお店を望んでおられるのかがとても重要です」
―物件オーナー様、フランチャイズオーナー様のご要望に対し、印銀さんはどのように応えておられるのでしょうか。
「コーヒーにこだわり、世界各国のコーヒー豆、特にアラビカ種を使用し、国内で焙煎、店舗で1杯1杯、半手動式でご提供していることは、私たちの強みです。加えて、当社の強みとなるのが『柔軟性』ではないでしょうか。オーナー様のご要望やロケーションに合わせて、さまざまな試みを行ったり、企業や各種団体とコラボレーションしたりしています。
たとえば、オーナー様のなかには、地域に少しでも貢献したいと考える方が少なくありません。タリーズの理念にも、『地域社会に根ざしたコミュニケーションカフェとなる』というのがありますから、コーヒースクールやセミナーを店内で行ったり、場合によっては地域清掃を一緒に手伝うなど、少しでも周辺の方と関係を築くことができるような提案を行うのもそのひとつです」
—企業などとのコラボレーションの事例についても教えてください。
「たとえば、仙台駅にある『コミュシティエスパル仙台店』は、地元の観光協会様や、地元の出版社様に協力をお願いしました。物件オーナー様が考えておられたのは、たくさん訪れる観光客に対して、何か情報発信できる店舗にしたいということ。多くの競合他社も同物件にアプローチしていましたから、タリーズならではのご提案ができるよう頭をひねったのを覚えています。
そのひとつとして、観光協会様にご協力いただき『こけし』や『だるま』『仙台箪笥(たんす)』といった仙台の伝統工芸を店内に展示したり、『仙台マップ』を壁に掲示して、来店したお客さまにおすすめの場所を書き込んでいただくなどの提案をしました。また地元の出版社様には、そうした取り組みを雑誌にとりあげていただけるようお願いしました。こうした提案が実り、同店を開店することができました。
今でも、店舗を訪れると、オープン当初は真っ白だった仙台マップにたくさんの書き込みがあり、とてもうれしく感じます。ただ、お店というのは、マップがいっぱいになれば終わりではなく、新しいことを継続して行っていかなくてはいけません。営業部と連動して、今後もさまざまな取り組みを進めていきたいと思っています」
『来てよかったな』と
感じていただける店舗づくりを
―ほかにも印象に残っている店舗開発の例があればおしえていただけますか。
「約14年前、タリーズ入社直後に最初に関わった『亀田メディカルセンター』という病院内の店舗は印象に残っています。当時、病院内店舗というのは、他社も含めてタリーズの「好仁会 東大病院店」1店舗のみでした。タリーズ自体も全国に100店舗強しかなかったこともあり、『病院にカフェなんていらないよ』と、話を聞いていただけませんでした。しかし、数カ月間定期的に訪れ、当社のことや、なぜ病院にカフェが必要かをお話し続けたところ、病院の新棟をつくる計画にタリーズを盛り込んでいただけることになりました。結果的に病院様自体が、フランチャイズ運営にも携わっていただけることになり、私にとって思い出深い店舗となっています。この経験がその後の病院内店舗開発へとつながり、現在では病院の敷地内にあるタリーズは80店を数えています」
―病院内店舗ならではの工夫というのはあるのでしょうか?
「車椅子の方はカウンターでぶつかりやすいのでカウンターをへこませて、車椅子がレジまでしっかりと入り込めるようにしたり、サイドに手すりをつけたりといった工夫をしました。ほかにも、アレルゲンの表示や、点字メニューの導入をした店舗もあります。一方で、病院様によっては、『病院に来てまでも“病院らしさ”はいらないので、なるべく街中にあるのと同じ空間を再現してほしい』というご意見もありますので、どのような店舗にするかは、ご相談次第ということになります。
病院にかぎらず店舗のあり方には、ロケーションを考慮することと、オーナー様の考え方をよくうかがうことがとても重要です。
たとえば、自転車利用者をメインとした鉄道駅土浦にある『プレイアトレ土浦店』は、店内に自転車を持ち込める設計にしています。また、東京上野にある和装店 鈴乃屋様は、1階の着物のショールームに着物を購入する目的以外のお客さまにもご来店いただこうという狙いがあり、カフェに来るお客さまがさりげなく着物を目にするようなお店づくりを行いました。
今後も、当社の柔軟性を生かして、オーナー様にとっても、訪れるお客さまにとっても、喜んでいただける店舗づくりを行っていきたいと思います」
—最後にこれからのタリーズについてのお考えを聞かせてください。
「『新しい価値を創造する』というのは当社の理念です。タリーズコーヒーというブランドだけで、世の中に劇的な変化を起こすことは難しいかもしれません。しかし、お客さまに『来てよかったな』と刺激を感じていただけるような店舗をつくるために、できることはまだまだたくさんあると思います。これからもタリーズブランドをしっかりと確立しながら、新しいことにチャレンジしていきたいですね」